「おたからや」は「1兆円企業」になれるのか|評判とあえて上場しないワケとは

おたからやの評判イメージ

上場とは、株式会社が自社の株式を証券取引所で公開することを指します。

上場が認められると、株式を担保にした資金調達をしやすくなります。企業情報の開示が義務付けられることで社会的な信頼度や知名度が高まり、人材を確保しやすくなるのもメリットです。

もちろん、上場にはかなりの資金力が必要になるため、会社の規模が小さければ上場したくてもできません。
しかし、有名な大企業であるにも関わらず、あえて上場しないケースもあります。

そんな会社のひとつが、ブランド時計や高級宝飾などの買取専門店「おたからや」を運営する株式会社いーふらんです。
非上場を選択する会社にはそれぞれの理由がありますが、株式会社いーふらんの場合は何なのでしょうか?

今回の記事で、詳しく解説していきましょう。

主力事業「おたからや」は全国で1000店舗以上を展開中

株式会社いーふらんの歴史は新しく、創業は2000年3月です。
同年に1号店がオープンした「おたからや」の運営会社で、2021年にヘルスケア事業、2022年にはゴルフ事業、不動産事業の新規分野に乗り出しています。

創業からわずか20年余りということを考えると、いわば「ベンチャー」のような捉え方もできるかもしれませんが、その業績はすさまじいスピードで拡大中です。

2008年に初のフランチャイズ店がオープンした「おたからや」の店舗数は全国で1000店舗を超え、2015年の売上高は50億円に到達。2022年は前年のほぼ倍となる470億円まで伸びています。

いーふらんの公式YouTubeにフランチャイズオーナーのインタビュー動画がアップされています。オーナーからの評判もよく、長年の積み重ねが業界最大手の信頼につながっているようです。

「おたからや」を運営する株式会社いーふらんはなぜ非上場を貫くのか?

社会に還元する

会社が非上場であり続けることには、いくつかの理由が考えられます。
例えば、オーナー経営者が「株主に遠慮することなく好きなように会社を動かしたい」と考えているため、業績が低迷したときに投資家の突き上げを食らうのを避けるため、あるいはTOB(敵対的買収)のリスクをなくすためといったことが挙げられるでしょう。

しかし、株式会社いーふらんが上場しないのは、経営者の都合が理由ではありません。
非上場を貫いているのは「会社は経営者や出資者だけのものではなく、社会やそこで働く社員のためにある」という創業以来の信念を貫いているからです。

事実、株式会社いーふらんは世界の貧困撲滅を目指し、海外でさまざまなCSR活動に取り組んでいます。
「社会のためにある」というミッションを実現したいという思いから、事業活動で得た利益を社会に還元しているのです。

社員に還元する

事業活動の利益は、社員にも十分還元されています。
株式会社いーふらんの営業総合職の初任給は30万円で、2022年3月卒の新入社員の最高月収は92万円余りにも達しています。
会社全体では20代の社員の割合が全体の半分を占めているにも関わらず、営業職の平均年収は1200万円という驚きの給与水準です。

残業ゼロ・有休消化率100%の健康的な職場環境、恵まれた福利厚生も実現できたのは、株主への利益還元を優先する必要のない非上場の会社だからこそと言えるでしょう。

非上場のメリットを活かして業績を伸ばす

近年は、社員の評価に成果主義を取り入れる会社が増えています。
株式会社いーふらんも年齢や勤続年数にこだわらない完全成果主義を徹底していますが、成果に見合ったインセンティブを惜しまない姿勢が給与の高さに表れています。
いくら頑張っても給与が変わらないというのでは、社員のモチベーションは高まらないでしょう。

株式会社いーふらんは、青天井の高収入を得られる給与体系を敷くことで最大限に引き出した社員の意欲を原動力にして、会社の成長スピードを加速させています。

もちろん、SDGsの追い風が吹くリユース市場の規模も拡大しているのは確かです。しかし、株式会社いーふらんの成長率は、市場の広がりを上回る勢いを見せています。

株式会社いーふらんの還元の精神は「誰もが自分の可能性を信じられる社会づくり」という企業理念に基づくものですが、そうした思いは自社の顧客にも向けられています。
毎日多くの人々が「おたからや」などの店舗を訪れているのが何よりの証拠で、それが会社の評判の高まりにもつながっていると言えるでしょう。

将来はホールディングス化を視野

2年以内の売上高1000億円達成が見えてきた中、株式会社いーふらんは持株会社の設立によるホールディングス化を視野に入れています。
ホールディングス化を果たすことで経営効率が高まれば、業績拡大のスピードが一層速まるのは間違いありません。

非上場の経営方針は一貫しつつ、さらなる発展を見据えた会社組織のブラッシュアップには余念がないのです。

まとめ

上場には、創業者や経営者が莫大な利益を得られるというメリットもあります。上場前の株式の大半は創業者や経営者が保有していることがほとんどのため、上場の際に売却すれば大きな富を手に入れられるというわけです。

しかし、非上場を貫くという株式会社いーふらんの経営方針を決めたのは、創業者である前社長の渡辺喜久男会長自身に他なりません。
非上場が会社の発展にもたらすメリットを捨ててまで経営者個人の利益など求めないという清廉な姿勢は、渡辺氏にバトンを託された鹿村大志社長にも脈々と受け継がれています。

今後、成長していく中で上場するタイミングもあるかもしれません。主力事業である「おたからや」の店舗拡大を見据え、その時の外部環境等を鑑みて最善の選択をしていくことでしょう。どのように成長させていくのか、楽しみです。